梅田邸 of 一般社団法人おんなたちの古民家

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File3 山口市中心商店街に残る 築170年の伝統的町屋「梅田邸」
2012年春、再生され飲食店としてオープン。


山口市の中心商店街の中に、推定築170年の伝統的な町屋があります。私も、古民家鑑定士になるまで知らなかったこのお家は、梅田邸という立派な民家です。オーナー会員のHさんに紹介していただきました♪

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山口市は、2007年に国の認定を受けた中心市街地活性化基本計画で、商店街を1つのショッピングモールと見立てた「2核十字型モール構想」を打ち出しています。そこで今年(2011年)春にオープンしたのが、マルシェ中市。この構想における「西の核」の拠点となる「どうもんパーク」(2007年12月完成)に続き、「東の核」の一翼を担う施設として整備されました。

 そして、この「東の核」づくりに関しては、マルシェ中市に隣接する伝統的町屋「梅田邸」の再生も進行中なのです。来年(2012年)春には飲食を軸とする施設がオープン予定とのことで、私も驚きました。

「梅田邸」は山口井筒屋の隣にあるのですが、間口がとてもせまいため、私もこれまで注目したことがありませんでした。しかし、中に入るとびっくり!! 今まで見た古民家の中でも1番☆というほど、本当に感動的な空間が広がっていました。

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そんな梅田邸は、今年(2011)の11月から改装工事に入るため、今のこの状態が見られるのはあとわずかということを知りました。もちろん、再生して来年には素敵によみがえるのですが、なんだか少しさみしい気もしました。そこで!ぜひ改装される前に!!と、お家を見せてもらうことができました。

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この家の御先祖様は、今から、154年前の安政4年(1857年)に生まれた梅田治輔さんという方です。明治11年に副戸長になり、その後戸長になられました。明治24年には所得税調査委員、さらに広島税務署より営業税審査員を命ぜられ、町会議員に初回から当選。山口町長を明治38年から41年7月まで在任、明治40年から41年7月までは、山口実業談話曾(山口商工会議所の前身)の初代会長にも就任されました。誠実で温和な性格で、山口の兵営設置や山口小郡間軌道会社創設等にも功がありました。山口大神宮崇敬者総代にもなり、自らの巨資を投じて高嶺の山林を大神宮に寄付されたそうです(大正1年2月没・享年65)。

40年前、そんな梅田邸にお手伝いさんとしてきた、渡辺和江さん(69)は、今でも梅田邸の管理人として家を守っていらっしゃる方です。梅田邸の歴史、そこで繰り広げられたドラマをすべて見てきた渡辺さんにお会いしました。

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梅田邸の玄関を入り、少し歩くと、目の前に広々とした吹き抜けの空間が広がります。天窓から光が差し込み、明るい土間にいると、なんだか長い時間の経過を感じさせてくれます。

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渡辺さんによると、梅田邸は、もともと江戸時代は、お酢屋さんだったそう。それから、呉服屋になり、明治にはいって質屋も始め、終戦からは質屋にしぼり、近年は山大生の下宿など、貸家として利用されていたそうです。

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山口県商工図録には、醤油製造とも記されています↑
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現在、梅田さんは横浜に住んでいらっしゃるため、渡辺さんが管理者として家を守っていらっしゃいます。山口市の秋のイベント「アートふる山口」の時には、毎年一般開放されていました。

渡辺さんはまず梅田邸に来ると、神様や玄関などなど、11箇所に花を生けます。それだけでもかなり時間がかかるそう。
それから、茶の間、床の間、客間などに掃除機をかけたり、床を拭いたり、さらに毎月、床の間には季節に合わせた掛け軸を飾り、行事ごとに雛人形、五月人形を出したり、お客さんの対応をしたりと、大忙しです。

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梅田邸の先代の奥様・芳子さんが亡くなられ、今年(2011)の12月24日で5年がたつということです。とても素敵な奥様で、「あんなに着物が似合う人はいなかったです。本当に美しかった」と、渡辺さんは話してくれました。

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こんなに大きくて立派な床の間、なかなか見ることがありません↓

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しかも、びっくりしたのが、先代の奥様のお母様は、あの岩国の宇野千代さんといとこだったということです。 岩国からお嫁に来られたということで、渡辺さんもよく宇野千代さんのお話を聞かせてもらいましたよ~とのこと(@@) 本当にびっくりしました!


大きな床の間、欄間、掛け軸、茶室、濡れ縁に、長いひさし・・・
家の中に入っただけで古民家の大きな力が包み込んでくれるような、心から癒されるお家でした。

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茶室 
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来年春には、この古民家の雰囲気にあうような飲食店がオープンするそう!

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渡辺さんは「再生されることで、これからもこの家が長く生き続けてくれたら嬉しいです。でも・・・ずっと見てきた家なので、やっぱり少しさみしい気持ちもありますよ」と、最後に話してくれました。

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約40年間、この家の歴史を見続けてきた渡辺さん・・・・本当にお疲れ様でした♪ そして、取材に協力していただき、本当にありがとうございました。
 これからも、梅田邸は山口の宝、中心商店街の宝として、みんなで守っていきたいですね。Natsuko(2011/10/2 )